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最高裁判所第二小法廷 昭和51年(オ)265号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人佐々木敬勝、同塚口正男、同西村元昭の上告理由一について

原審が適法に確定したところによれば、所論の谷角久は、被上告銀行の本店審査部付調査役として、被上告銀行鳥取支店長在職中に貸し付けた金員の回収に当たつていたのであり、被上告銀行が所論の損害担保契約を締結し、又は債務免除をするときは、本件不動産によつて担保される被上告銀行の債権が実質上、回収不可能になるおそれがあるというのである。したがつて、同調査役は、右債権の回収事務に関してのみ商法四三条の委任を受けた使用人に当たるのにすぎず、本件不動産によつて担保される被上告銀行の債権が回収不可能となるような本件損害担保契約締結又は債務免除の代理権までも与えられていたものではないと解するのが相当である。右と同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その他原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同二について

上告人が谷角久に本件損害担保契約締結又は債務免除の代理権があると信ずるにつき重大な過失があつたとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠及び説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 吉田 豊 裁判官 本林 譲 裁判官 栗本一夫)

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